IEC/TC 62の活動状況について
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IEC/TC 62 “Electrical equipment in medical practice(医用電気機器)”(IECのページへ)
議長:Mr. Rodolfo I Godinez(米国)、幹事国:ドイツ
参加国:日本、米国、ドイツ、英国等 (P-member 27ヶ国)
オブザーバー参加国(O-member) 18ヶ国
国内審議団体:(一社)電子情報技術産業協会
討議内容:
ヘルスケアに使用される電気機器、電気システム、ソフトウェア並びにそれらが患者、操作者、他人、環境に及ぼす影響に関する国際標準を作成すること。
このTCは、実質的な討議が行われる4つのSCのとりまとめを行っており、現在、このTC自体で国際標準が作成されてはいない。このTCにより発行された国際標準は、IEC
TR 60788:2004 “Medical electrical equipment - Glossary of defined terms
(Ed. 2)” のみであり、最近配布されている文書も、2015年11月に開催された神戸総会の議事次第案や案内、TC の運営上必要な各種連絡だけである。一方、直下のSC4つでは、国際標準作成活動が活発に行われている。
4つのSCのうち、SC 62Aでは横断的(Horizontal)な標準が作成されており、現在までに55の国際標準化文書が発行されている。その他3つでは個別規格が作成されている。SC
62Bでは画像診断関係(レントゲン、CT及びMRIが対象。現在の国際標準化文書発行数は68)、SC 62Cでは放射線治療装置、核医学及び放射線量計に関する規格(現在の国際標準化文書発行数は35)が作成されており、SC 62Dでは残りの医療機器、すなわち非常に多岐に渡る医療機器を対象とした規格が作成されている(現在の国際標準化文書発行数は73)。ソフトウェアに関連する規格を作成しているのは主にSC
62Aであり、現在は、TC 210(JWG 3)、あるいはTC 215(JWG 7)とのjoint WGでその作業が行われている。2014年は11月にNew
Orleansで総会が行われ、関連SC総会もそれらと連動する形で開催された(結果として、会議期間は10日間の長丁場になっているが、例年、会議期間はこの程度になるそうである)。
本ページでは、特にSC 62AとSC 62Dについての詳細を紹介する。
SC 62A "Common aspects of electrical equipment used in medical practice(医用電気機器に関する共通事項)"(IECのページへ)
討議内容:
SC 62Aでは通則と呼ばれる共通規格IEC 60601-1「医用電気機器の一般的要求事項」とその一般的要求事項のうち共通性の高い項目についての規格である副通則IEC
60601-1-XX(XXは任意の数字が入る)が作成されているが、IEC 60601に該当しないものの医用電気機器として共通性の高い項目に関しての規格作成も行われている。活発な議論の下、標準化作業が進んでいるが、その中でも最も活発に討議されている対象の一つがソフトウェアである。ソフトウェアが議題に取り込まれた当初は、特定のハードウェア(医療機器)とセットで使用されるものであったため、それを念頭においた品質管理のための規格として、ISO/TC
210とのJWGであるJWG3によりIEC 62304が作成された(ソフトウェアの設計開発から、実装、検証、試験、販売まで含む)。しかしながら、ソフトウェア並びにIT技術革新が急速に進んだため、それに対応する形で、IEC
62304は対象を「医療機器」から非医療機器も含んだHealth Software全てに変更して、Edition 2を作成することが決定した。また、作業主体がTC
215とのJWGであるJWG 7で行われることも決定した。この決定に伴い、IEC 62304のAmendmentはJWG 3で作成されているものの、その改訂版は並行して別JWGで作成されるという、一見奇妙な状況が生まれている。現在、当該標準はさらに改訂作業が行われており、現在第3版がDIS
stageまで進んでいる。
JWG 7では特定のハードウェア上で動くことを想定しない、つまり、汎用PCで動くソフトウェアを対象としてIEC 82304を作成している。もともとIEC
62304が医療機器に該当するソフトウェアを対象としていたのに対し、こちらは医療機器、非医療機器に関わらず単独ソフトウェアを対象にしたものとして作成が進んでいる。この切り分けは様々な文献で図として示されているが、重複する部分も存在し、専門家以外には非常に難解な状況を生んでいる。
SC 62D "Electromedical equipment(医用電子機器の個別要求事項)"(IECのページへ)
討議内容:
先述したように、SC 62Dは多様な医用電子機器の個別規格を作成しているが、その対象機器は多岐に渡るため、作成作業を行うWGの数も多くなっている。いずれのSCにおいても、対象機器の特性上、WGは他の関連ISO/TCとのJWGとなることが多いが、このSCにおけるWG数は13であり、他の個別機器標準を作成するSC
62B及びSC 62C各々のWG数が3と比較して非常に多い。また、過去に作成した規格を適宜改訂するためのMaintenance Team(MT)も多数存在する。
(注:MTは成立した規格を保守、改訂するために設置されるIEC独自の制度のようで、過去にその規格成立作業を行ったWGがそのままMTに形を変えるケースが多いように思われる。ISOの場合、定期見直しの結果や改訂提案に応じてその規格を作成したWGが改訂を行うことが殆どであり、稀に当該WGが消滅していることもあるが、その場合は親TC、SCが必要に応じて作業を行う。詳細に関しては、日本工業標準調査会のHPに紹介されている。)
JWG 7について
正式名称は、ISO/TC 215/JWG 7 (Joint ISO/TC 215 - IEC/SC 62A WG) “Application of risk management to information technology (IT) networks incorporating medical devices(医用機器を含むITネットワークにおけるリスクマネジメントの適用)”である。
討議内容:
上述したように、本来、このJWGではIEC 82304 “Health software -- Part 1: General requirements for product safety”を作成するJWGであったが、IEC/TC 62のScope拡大に伴い、Health Softwareに関連する規格は全てこのJWG 7で作成するべきとのコンセンサスがなされ、IEC 62304のEdition 2作成もこのJWG 7に移管されることになった。前述の通り、現在、IEC 62304は第3版の作成が進んでいる。
今のところ、これらの状況に変わりはないが、技術革新に伴い、医療機器にもAI及びサイバーセキュリティ技術の導入が必要となってきた。この動きに応じて、JWG
7での討議文書は再編される可能性がある。
正式名称は、Software Network and Artificial Intelligence Advisory Groupである。
前述した通り、技術革新に伴い、医療機器と関連したAI及びサイバーセキュリティに関する標準のニーズが高まったことから、2020年に設立された独立グループである。原則、各国からは1名しか参加は許されていないが、Liaisonという形でドイツ及び米国は複数名参加している。テーマに鑑み、現在中国及びインドからの委員追加が検討されている。会議では各国の規制状況も総会されており、AIを扱った更なるSCの設立提言も検討しているようである。
AI自体に関する標準はISO/IEC JTC 1/SC 42 “Artificial Intelligence”で作成されているが、規制対象となる医療機器についての考慮はない。そのため、医療機器に特化した場合の標準をどのように作成するかが鍵となっている。そのような中、規制当局側でもAIを利用した医療機器に関する国際整合の動きが始まった。具体的には、2020年にIMDRF(International Medical Device Regulators Forum)においてAI-Medical Deviceを扱うWGが立ち上がり、「機械学習」を使用したAI利用医療機器に関する規制関連文書を2022年3月までに発行するための活動が進んでいる(用語の定義)。その動きと足並みを揃える必要性も生じている。なお、IMDRFは、既にサイバーセキュリティに関するガイダンス文書を発行したが、対象となる医療機器の安全性を確実に確保するためにはその周知が前提となるため、再度WGを立ち上げ、周知のみならず、関連規制の国際整合を進めるための活動を再開している。
Last update 2016.03.31
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