部長室

STAFF

専門及び担当業務 
部長 山本 栄一 [専門]分析化学、物理化学
[行政支援等]薬事・食品衛生審議会/医療機器・再生医療等製品安全対策部会委員、国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する検討会委員、医薬品医療機器総合機構日本薬局方化学薬品委員会(1)/物性委員会委員/医療機器GLP専門委員会委員
[国際規格関連]ISO/TC 194(医療機器の生物学的評価)国内委員長、ISO/TC 106(歯科材料・機器)/WG 10委員
[教育関連]大阪大学連携大学院招へい教授(医療機器安全学)、昭和大学薬学部非常勤講師(薬剤学)
[団体関連]日本歯科医師会歯科医療機器試験ガイドライン検討会委員、日本グローブ協会JIS原案作成委員会委員長、日本薬剤師会薬局製剤・漢方委員会委員
[学会関連]レギュラトリーサイエンス学会編集委員会委員、日本薬学会レギュラトリーサイエンス部会委員、日本薬剤学会編集委員会委員/薬剤学会核酸・遺伝子医薬フォーカスグループ幹事、クロマトグラフィー科学会評議員
期間業務職員 林 美和 [担当業務]秘書業務

◎医療機器部の業務紹介

  1. 国産医療機器の開発・上市に関するレギュラトリーサイエンスの意義
     我が国の高品質の医療機器は国内のみならず諸外国においても高い評価をもって受け入れられる可能性を有しています。グローバル化が進む近代社会において、その可能性を事実に変えるのは産学官の全ての関係者であり、我々もその責務を負っています。
     医療機器の開発・事業化については、医療現場のニーズ把握や薬事への対応等において、ハードルの高い多数の課題があります。また、上市後に至っても、販路の開拓や標準化戦略等の問題が山積します。これらの課題を解消する施策の一つとして、医療機器政策に特化し、各段階に応じた関係省庁の各種施策を網羅した政府としての初めての戦略である「国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する基本計画(医療機器促進法基本計画)」が平成28年5月31日に閣議決定されました。医療機器促進法基本計画では、1)先進的な医療機器の研究開発の促進、2)医療機器開発関係者の従前の枠組みを超えた連携協力、3)医療機器の迅速な承認体制及び適正使用等の確保、4)医療機器の輸出等の促進と国際協力及び展開、5)その他の重要課題(クリニカル・イノベーション・ネットワーク等)の5分野を国として推進することが掲げられています。これら5分野のうちの第3分野では、健康・医療戦略推進法が定める「医療分野の研究開発の成果の実用化に際し、その品質、有効性及び安全性を科学的知見に基づき適正かつ迅速に予測、評価及び判断することに関する科学の振興」、すなわち「レギュラトリーサイエンスの普及・充実の推進」が提唱されています。

  2. 医療機器部の主な業務(図1, 2)
     国立医薬品食品衛生研究所医療機器部は、医療機器及び医用材料に関する研究を公正中立の立場で実施し、科学的知見に基づいて医療機器行政を支援する部署です。革新的医療機器の開発にあたっては、意図する機能を発揮するための材料選択が重要であると共に、その有効性と安全性を評価するために新たな手法が必要となるケースが多々あります。既承認品であっても製品の特性に応じた試験法を開発することにより、より安全な製品を国民に届けることが可能になります。また、既存試験法も時代の科学水準に見合う内容に改訂していく必要がある等、生体に適用する医療機器の安全性評価に必要な非臨床試験の重要度は益々増してきており、新たな試験法の開発・標準化は我々が最も強力に推進すべき業務となっています。その他、医療機器のライフサイクル(図3)を加速させる一環として、産官学連携のもと、規格・基準等の策定・標準化、医療機器開発支援ネットワークへの参画、医療機器・医用材料の研究開発、人材育成及び広報・啓発活動等を推進しています。

    図1:業務概要
    図1:医療機器部の業務概要

    図2:研究業務紹介
    図2:医療機器部が実施している研究

    図3:役割
    図3:医療機器ライフサイクルにおいて医療機器部が果たすべき役割


    1. 新規試験法の開発
       臨床試験において示すべき内容は非臨床試験で得られた情報により決まる場合があると共に、非臨床試験でハザードが十分に検出され、リスクが推定されれば、臨床試験において観察すべき項目が決まります。すなわち、非臨床試験は臨床試験のデザインを考える上で重要な位置を占めています。我々は、かねてより化学的、生物学的及び力学的安全性評価法の開発や改良等に従事していますが、その多くは医療機器全般を対象としたホリゾンタルな試験法です。しかしながら、新技術を利用して製造された新医療機器の実用化を促進すると共に、より安全な医療機器を国民に提供するためには、一般的な非臨床試験法をそのまま適用できない可能性もあるため、個々の製品群に特化し、動物実験と臨床試験のデザイン構築にも寄与できる非臨床試験法(性能試験法:実臨床を模した試験系や動物実験では探知できないパラメータを評価できる試験系等)の開発を推進しています。

    2. 規格・基準等の策定と国際標準化
       日本発の革新的医療機器の開発を促進すると共に、薬事審査の迅速化を図る国家的施策の一つとして、医療機器の品質、有効性及び安全性を科学的根拠に基づいて評価するためのガイドライン、評価指標、承認・認証基準等の整備のほか、海外展開を目指した国際標準化の推進が掲げられています。この施策の一環として、我々は次世代医療機器・再生医療等製品評価指標作成事業や国際標準獲得推進促進事業等において、評価指標やガイドラインの作成とその国際標準化を進めています。承認・認証基準については、最新の国際的な基準と整合を図ると共に、更なる合理化を進める必要があるため、今後も新規制定及び改訂が行われます。既存のISO規格の中には現在の技術レベルに合致していない試験法を採用している規格も存在するため、内容を精査して順次改訂していく必要もあります。世界的にデファクト標準からデジュール標準に移行する中、日本の国内法規における要求事項を反映した国際規格を作成し、運用することは我が国の優れた製品を世界的に流通させるための重要な戦略となるため、改訂作業のみならず新規規格の提案も行っています。

    3. オールジャパンによる医療機器開発への関与
       健康・医療戦略推進会議が所管する次世代医療機器開発推進協議会の傘下に構築された「医療機器開発支援ネットワーク」は、関係府省(内閣官房、経済産業省、文部科学省、厚生労働省)や関連機関、企業、地域支援機関等が連携し、伴走コンサルとして開発初期段階から事業化に至るまで、開発段階に応じた切れ目のない支援を提供する施策である。医療機器開発基本計画においても積極的に推進すべき事項として掲げられており、厚生労働省の支援機関として、医療機器部も積極的に関与している。

    4. 産官学連携体制の強化
       健康・医療戦略推進会議が所管する次世代医療機器開発推進協議会の傘下に構築された「医療機器開発支援ネットワーク」は、関係府省(内閣官房、経済産業省、文部科学省、厚生労働省)や関連機関、企業、地域支援機関等が連携し、伴走コンサルとして開発初期段階から事業化に至るまで、開発段階に応じた切れ目のない支援を提供する施策です。医療機器促進法基本計画の第1分野においても積極的に推進すべき事項として掲げられており、我々も厚生労働省の支援機関の一つとして、積極的に関与しています。 

    5. 医療機器開発よろず相談
       医療機器開発を効率的に推進する手法の一つとして、PMDAは開発初期段階から各種相談に応じています。また、医療機器開発支援ネットワークでも様々な相談を受け付けていますが、医療機器部では、これらの支援体制が整備される以前から、各種相談に対応してきた経緯があります。薬事に精通していない等、PMDAの事前相談を利用する以前の段階も含めて、薬事関連の不明点、疑問点、留意すべき事項に関する相談全般を無償で受け付けています。但し、私共の「よろず相談」は、薬事の一般的な考え方の回答となります。厚生労働省及びPMDAの判断と同一であることを保証するものではありませんので、確実な回答を得るためには規制当局へご照会下さい。なお、よろず相談を希望する方はこちらからお申し込みください。 

    6. その他
       医療機器及び医用材料の安全性評価に関する研究では、製品開発に繋がる知見が得られる場合もあることから、開発の萌芽を見逃すことなく、医療機器の改良や試験的製造に関する業務も推進しています。また、人材育成、行政試験に関する地方衛研との連携・技術移譲、講演会や学会オーガナイズドセッションの企画・開催、並びに啓発活動等も行っています。



Last Updated 2022/07/21
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