第4回インプラント・データシステム委員会 議事録(案)
日時: 平成14年7月30日(火)、午後2時〜5時
場所: 東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 3階ゼミナール室
参加者: 山中、妙中、中谷、守屋、小林、中林、冨沢、古川(立石代理)、吉川、北村、 澤、塙、酒井
土屋、松岡、佐藤(事務局)
1.事務連絡
立石先生の代理で、東大の古川先生に来て頂いている。また、この委員会の設立に関わった中林先生にも参加して頂いている。
委員会のWebページの立ち上げを予定している。掲載事項は、規約、委員会の説明、議事録、各サイトへのリンク、そして可能であれば公開できるデータベース、などである。各グループ等で公開に適しているものがあれば、連絡をお願いする。委員には公開前に意見を求めることとする。
2.配付資料
第3回インプラント・データシステム委員会議事録(案)、「インプラント用具の商品識別表示に関する実態調査」(名城大学)、「眼内レンズインプラントデータシステム委員会報告」、FDAのMedical Device Reporting報告の集計(眼科関係、循環器関係)、改正薬事法の説明資料、が配布された。MDRの集計については、整形外科に関する厚生科学研究の手法に基づいて2分野で集計を行ったものであり、改正薬事法の資料は前回話題に上ったため参考までに添付した。
3.第3回委員会の議事録について
前回の議事緑(案)の要約を紹介後、了承された。
4.各グループの経過報告(下記のような説明があった)
a)人工臓器学会
レジストリは続けてゆく方針であるが、PDF化によるWeb掲載などで、印刷費の削減を図るなど、経費を抑えることを考えている。できれば、毎年行うのが望ましい。9月の理事会で最終決定を行う。人工関節などは、人工臓器学会内に関係者が不在であり、学会内だけでは困難な部分もあるため、各学会と協力して行う必要があるが、まだ未定である。また、出荷量と使用量等のデータの入手が望まれる。各用具の特性によって捕捉データの濃密は異なってくる。使用動向を知る上で役に立っているが、個別用具の評価にも役立つようなもの等、内容を含めて検討してゆきたい。
b)ステント委員会
2種類のステントについては業者の協力を得てフォローアップを行っている。今回、ステントグラフトについてアンケート調査を行いたい。前回は1999年に行った。当病院の症例でグラフト留置4年後にendoleakに因るものと思われる切迫破裂を来した例があった。また、endoleakはなかったが、留置後に瘤径の増大が認められた例もあった。など、いろいろな問題が起こっているためである。グラフトの種類、適応、合併症などについて、学会、研究会の協力を仰ぐ。秋頃から開始したい。
c)名城大学
各メーカーにインプラントの商品識別とバーコード表示についてのアンケート調査を行った。有効回答率は9割であった。インプラントによって個装への表示状況は異なっていた。特定用具については、さすがに進んでいるが、整形外科関係ははかどっていない。用具の種類が非常に多いことが原因と思われる。当初、業界はシリアル番号の表示を考えていなかったようだが、インプラントには必要と認め、業界のガイドラインにも記載されるようになった。また、医療機関ではバーコードの必要性を感じ始めている。添付文書については、常に最新版を入手できるよう、SGMLやPDFなどの形態での供給が検討されている。できれば、材料データベースにリンクの形で供給されれば、さらに有用と思われる。
d)東京女子医大
冠動脈バイパス術でグラフトの吻合を縫合糸でなくコネクターを用いる例が増えている。日本では遠隔成績がまだ少なく、欧米と比して日本人は小柄なため血液流量の点で懸念され、内膜肥厚の例もあるようだ。また、小児循環器学会で「PTFEグラフトの血漿漏出に対する予防と治療戦略」のセッションが開かれ症例が紹介された。なお、学会でも不具合報告制度が周知されていない状況にあり、報告用紙のWebでの入手方法*1)を工夫する必要もあるのではないか。
*1) http://www.pharmasys.gr.jp/ の /info/report_yougu.pdf に書式が掲載されている。
e)物質・材料研究機構
各グループからの摘出物の分析も開始する。以前から行っているステンレス鋼、チタン合金の整形外科インプラント摘出物については、XPSで分析した。両者で検出された元素は異なるが、同じ材料、接触環境であれば、再現性があることが分かった。チタン合金では、Vは検出されず、タンパク質の吸着傾向が見られた。ステンレスでは、チタン合金よりタンパク吸着量が少なく、また、表面の腐食が示唆された。なお、金属材料の破壊についても研究協力が可能と思われる。
f)埋植心臓弁
5施設でのデータベースを整備している。患者さんへのアンケートについても回答が集まっている。データベースの整備が完了すれば、各施設での解析と伴に、共通項目をセンターに集計してゆくつもりである。まず、再手術例に力を入れてゆく。摘出物についてはパンヌスと血栓、摩耗等について調べる。今後、調査項目、解析方法の改善に努める。解析については急性期の多変量解析はほぼ確立しているが、遠隔期の時間経過を含めた方法を検討中である。また、データベースの最終案を詰めてゆきたい。データは、各施設の10年間分を入力して貰うことになっている。それ以上は、各施設の自主性に任せることになる。
g)整形外科学会
人工関節の摘出理由について調査中であり、200例を目標に集めている。手術手技を考慮して大病院だけ5施設の事例を集めている。また、前回、骨補填材料の合併症について指摘したところ、厚生労働省の協力が得られた。材料の目的部位からの移動例、感染例があり、今後の対策を検討中である。脊椎インプラントについては、固定材が多用されており、遠隔期の成績について調べている。また、その破損例についても検討を開始する。なお、整形外科学会での安全性情報報告制度の周知についても努力したい。また、学会でインプラントデータシステムの重要性を宣伝するために教育講演を準備している。
h)眼内レンズ委員会
「眼内レンズインプラントデータシステム委員会報告」を学会誌に掲載し、活動を広く知らせている。禁忌例でも眼内レンズが使用される例があるが、実際には禁忌から外すのが好ましい症例もあり、文献・実態調査を行って検討してゆきたい。摘出レンズの分析は、PMMA以外の新規材料が多用(7割がfoldableレンズ)されている折から、長期成績を確認するためにも必要となる。機械的性質では、foldableレンズにPMMA製の支持部が増えていることもあり、強度的な検討を加える。物理化学的特性についても表面観察を含めて検討する。小児例については個別例について手術データを集積して安全な手術の検討を行う。摘出レンズ自体の取り扱いで取り決めが必要な事例が出てきているため、広報を通じて当委員会の活動を周知する努力を続けたい。
i)国立衛研
FDAの集計は、用具の分類別に、過去10年間の34万件あまりのデータを整理したものである。眼科関係では、眼内レンズの報告数が多い。なお、報告数の多いメーカーは販売量も多いことを考慮する必要がある。循環器関係では、除細動器関連が多い。ruptureを含んだ報告(用具以外のruptureも含む)では、カテーテル関係が多かった。報告数と不具合の度合いには直接の相関関係はないことに注意が必要である。ruptureのように特定の不具合を示す言葉があれば、お知らせ頂ければ調べてみたい。
摘出埋植弁の周辺組織分析については倫理委員会で検討している。
5.14年度研究計画について
昨年度は、国立衛研や事務局の予算については縮小したが、各グループへの配分については計画通りさせて頂いた。今年度は、昨年度を考慮して配分を進めることになろう。要求書類は順次、個別にお願いする。
当委員会関連の衛研の予算は、第二次として15年度までの計画であったが、厚生労働省がリスク管理、標準化という大きなテーマを掲げており、その一環として、先端的医療用具のリスク評価、第三次摘出インプラント関連評価、細胞用具の標準化を含めて、15年から5年計画ということで計上している。継続することが重要であると考えている。
6.次回の委員会
次回は、10月に予定している。次回の日程については、後ほどメールで、問い合わせをさせていただく。日時はできれば来週中には調整し、日時*2)によって場所を決めたい。
*2):12月24日に行うこととなった
7.話題に上った事柄(順不同)
[組織工学製品]
組織工学製品で有効性が問題になっている。皮膚や軟骨など、短期での良い成績しか話題になっていない。成績不良を含めた長期の追跡が必要と思われる。
厳密には、承認後に埋植したものを全例、分析するなどが必要になるのではないか。審査にかかっていない試験的なデータについても検討出来ればと良いと思われる。ただ、倫理委員会にかけてICも行っているため、無茶なものはないであろう。
[個別事例の追跡]
事後アンケートでなく、埋植弁のようにたとえ施設を絞っても、個別経過が追えるようなやり方も大切だと思われる。
人工血管で問題になるのは、吻合部を別にすれば10年以上の成績である。追跡が技術的にも非常に難しくなる。患者さんが定期的に外来に来られることもないので、退院後は、もし血管が摘出されても、別の病院では、その埋植経緯を知ることは困難である。従って、長期の記録システムが必須となる。
[摘出物]
論文にされた後は、摘出されたものは廃棄されている例が多い。
眼内レンズに関しては、システムが出来ると摘出物が集まってくる。学会で取り組むことが非常に大切である。
[ステント]
自作のケースでの不具合事例などは収集が難しいだろう。
個人輸入品については、不具合の報告義務を負う業者が存在しないため、医師からのボランタリーな報告を待つしかない。メーカーとしても個人輸入の製品でトラブルが起こるのを恐れて供給に消極的になっているようだ。
ステントの金属材質は、ステンレスとニチノールがあるが、材料によって不具合が異なることはないか。ニチノールは一部の小血管のみで使用されており、大血管で不具合が起こっているようなので、結果的にステンレスの例が多いだろう。小血管ではステントの破損例はあまり聞かない。ruptureは早いものは数年で起こる。自家性ステントの
ruptureが多く、折り曲げやハンダ付けの不良などで起こるようだ。
[添付文書]
医薬品では、現在、添付文書が医薬品機構のWebページで入手できるようになっている。用具の場合、マニュアルを整理しておくことも容易ではないため、使用時にWebで確認できれば役立つ。
生物由来材料については、個装表示が重要になろう。
[整形外科固定材]
固定材料は骨折等が直った段階で摘出した方が良いのであろうか。チタンについては体内にあっても問題ないのではないか。ステンレスでは腐食した場合は、摘出した方が良いかもしれないが、20年埋め込んでも腐食せず綺麗なものもある。