21世紀に入り、完全埋め込み型心臓ポンプや、細胞組織医療機器に象徴されるように、医療機器は、技術革新による新しい機器の開発に期待が集まっている。しかし、医療機器は多種多様で、製品開発サイクルは短く、成熟度の低い製品(例:冠動脈ステント等心臓血管系製品)では、頻繁な技術革新による絶え間ない既存製品の改良や新製品の開発が行われており、研究開発が産業発展の鍵となっている。再生医療の分野においても、研究開発が進められ、製品化が検討されている。今後も、培養皮膚等をはじめ、再生医療製品及び技術については国際的な研究開発競争が進むものと思われる。
医療機器の高度化に伴い、新規性の高い医療機器の開発を進めるためには、医療だけでなく、薬学、生物、機械、電気、工学、物理、化学等各分野の高度な知識及び技術の統合が必要となっている。また、新規の開発だけでなく、医師がベッドサイド等で使用して得られる経験に基づいた改良など、製品が上市された後の技術革新にも大きな意味がある事が医療機器の研究開発の特徴である。現場のニーズにあった医療機器を開発するためには、異種分野の研究者が共同できる環境整備と、製品化・商業化していくためには、民間企業等との連携が必要である。
一方、医療機器の研究開発においては、その特徴上、新製品を比較的短い周期で市場に次々と投入し続けることが重要だが、そのためには、莫大な費用と時間のかかる治験、承認申請手続き等を経なければならない。このため、グローバルな市場戦略が重要となっており、基準の標準化も求められる。平成5年に、医療機器国際整合化会議(GHTF)が開催され、それ以降、承認審査手順、不具合報告、品質管理等に係る基準の整合化について議論が続けられている。
また、再生医療等の最先端技術を活用した医療機器の開発、上市化では、医療機器の品質・有効性・安全性についての適切な評価を行うために、科学的見地からの検討を重ねることが極めて重要で、レギュラトリー・サイエンスの必要性が増大してきている。
本フォーラムでは、医療機器の健全な発展をはかるために、わが国における医療機器の開発、製造および品質管理に係る問題について、異種分野の研究者及び産官学の情報交換の場を作ることを目的として設立するものである。