三次元積層造形技術

 現在、いわゆる3Dプリンターの技術進展に伴い、この技術を利用した医療機器の開発研究が進められつつある。欧米では、既に一部パーツが当該技術で作成された人工股関節が実用化されている。細胞を3Dプリンターにより三次元構築して組織を構築するという研究も進んでいるが、まだ、再生医療分野での実現には越えるべき壁が数多く存在する。
 しかしながら、三次元積層造形分野における国際標準化も活動が始まっているため、その医療分野への適用可否はさておき、その情報も収集する価値はあると判断し、これまでに収集した情報を発信する。

( 過去の活動状況は以下をクリックしてください。2017年以前。)

TC 261 “Additive manufacturing” (ISOのページへ)
 議長:Dr Christian Seidel
 幹事国:ドイツ
 国内審議団体:技術研究組合 次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)
 設立:2011年
 P-member:26ヶ国、O-member: 7ヶ国
 発行IS:14、討議案件:31

 2011年に設立された非常にユニークなTC。ASTM F42と連携しており、WG以外にJoint Group (JG)が存在し、そこでASTMメンバーとISOメンバーとが特定のテーマを協議して原案を作成し、ISOとASTM、それぞれで文書化している。文書化のシステムは異なるものの、最終的に発行される文書は同一となる(文書としてはISO、ASTM両方のマークがつくことになる:ダブルロゴ)。
 このシステムの問題は、JGでの討議がWGでの討議よりも限定されたメンバーでの討議となるため、その原案がISOのWGに上がってくるまでは内容がわからず、その後にWG内での討議が紛糾する可能性があることである。また、同一内容の文書であっても、システム上、ASTMの方が早く発行されてしまう可能性があることが挙げられる。一方、版権の問題をどのように解決しているのかは不明ではあるが、発行された標準は完全に国際的に整合したものとなることがメリットである。
 JGは非常に多いため、以下にWG等、情報がISOメンバーに開示されるグループを示す。

 これら以外に、上述したJGが多数、標準化提案対象の事前協議を行うためのAd-hoc groupが2つ (AHG 5 “Content for ISO/TC 261 homepage”及びAHG 6 “Coordination of work between ISO/TC 261 and ISO/TC 184/SC 1 and ISO/TC 184/SC 4”) 存在している。

 ASTMと連携していることから、このTCは年2回総会が行われ、一回は必ず米国で行われることになっている。次回は4月に米国アラバマ州で総会が開催される。

 2017年より、TC 150とLiaison関係を結んだことに伴い、TC 150日本代表がLiaison officerとして活動を行っている。その結果、2020年1月の総会において、積層造形技術を用いたインプラント(主に整形外科分野)に関する標準作成を行うべく、TC 150とJWGを立ち上げることが決定した。当該JWGのConvenorはLiaison officerを務めていたTC 150の日本代表が務めることも決定したが、会議自体はTC 261総会と同時に開催される方向で調整が進んでいる。
 また、韓国から積層造形への利用を念頭に置いた医療用CT画像から三次元モデルを作成する上での標準化がISO/IEC JTC1で提案されていることも判明しているが、提案としては具体的すぎることから、上述したJWGに再提案される可能性がある。これらのことから、今後、医療機器の製造手段の一つとし、積層造形技術の利用が活発になるとともに、その標準化のニーズも高まることが予想される。

Last update 2020.03.17
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