TC 276の活動状況について(2018年)
(2017年、2016年、2015年、2014年 の活動状況はそれぞれの年をクリックしてください。)
TC 276 “Biotechnology” (ISOのページへ)
2013年設立
議長:Mr. Richard Gent(ドイツ)、幹事国:ドイツ
参加国:日本、米国、ドイツ、英国、フランス、韓国等 (P-member 31ヶ国)
オブザーバー参加国(O-member) 15ヶ国
発行IS:5、討議案件:16
国内審議団体:(一社)再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)
討議内容:
もともとは、分析技術や各種omics分析法に関する標準化のために設立されたTC。本来、再生医療製品を扱うTCではなかったが、経産省の意向を受けてFIRMが国内審議団体となり、再生医療分野の標準化を試みている。具体的には、TC 276内に4つのtask forceが立ち上がり、「用語」、「バイオバンクシステム」、「分析方法」、「生物学的製造プロセス」を担当することになった。そのうち、「生物学的製造プロセス」では、FIRMが中心となって再生医療等製品の製造に必要な周辺技術の標準化を試みることとなった。しかしながら、その作業はTC 276の業務範囲外と判断されうると同時に、ISO内で業務の重複は認められないという基本原則にも反することになる。とりわけ、上記TC 150/SC 7が日本提案で設立されたにも関わらず、別TCで再生医療分野の標準化を試みるグループがあるのは日本の戦略としては矛盾しており、国際的に再生医療分野の標準化をリードするためには障害となりうる。そのため、FIRMを含め上記TCの国内審議団体間で連携を取ること、国策として再生医療分野をリードしていくため省庁間の垣根を越えた連携も不可欠というコンセンサスを国内キーメンバー間で共有した。そのような中、SC 7のScopeに入っていなかったこともあり、TC 276は「Cell therapy」をScopeに入れ込むこととなった。これに伴い、細胞自体に関連した標準はTC 276が担当することとなる。
TC 276でFIRMが標準化を検討している分野は「用語」、「製造プロセス」、「加工装置」、「培地等の消耗材」であったが、国内調整の結果、「用語」に関しては関連TCの共通言語としての規格作成をTC 150/SC 7で行うこととなり、TR 20386 “Inventory of biotechnology-related terms”として作成が続けられている。また、2017年、新たにデータ処理を対象としたWGが立ち上がっている。
「加工装置」に関してはTC 198/WG 9との連携が必要であること、製造プロセスに関しては薬事法改正に伴う下部省令、通知等による再生医療等製品国内規制の具体像が見えてこないと難しいことがあり、実際にこれらの標準化を進めるためにはまだ時間と関連機関との調整が必要と考えられる。これを踏まえ、TC 276では「業界標準」としての標準化作成作業を先行させており、規制との調和はその成立後に検討する方針のようである。
現在、WG は5つ存在しており精力的に活動を続けている。
2018年の活動状況:
TC 276は、未だに年2回のペースで総会、あるいはそれに準ずる会議を開催しており、6月には中国、北京で総会が、12月にはドイツ、ポツダムでWG会議が行われた。再生医療分野の標準化において鍵となる米国委員も継続的に参加しているが、SCB(Standards Cordinating Body)を設立してからの動向変化の有無が把握できていない。FDA(CBER)やNISTからの参加が継続していることから、戦略的な活動を継続していることだけは伺える。昨年度、報告した通り、米国は、再生医療のうち細胞治療関連、特に製造時の周辺機器や技術の標準化を優先することでこの分野のリーダーシップを確保したいと考えていることは間違いない。米国は、本来医薬品として扱われる可能性の高い細胞治療に関してISOにおける標準化が可能な対象の明確化や、産業界及び規制におけるニーズ調査を継続的に行っているが、「細胞数計測方法」の基本的考え方に続く標準化優先事項が明確になれば、その戦略がより明確になると思われる。我が国も早急に対応しなければ、この分野で後れを取ることになる。
現在、非常に多くの案件が正式な標準化作業対象として登録されている(別リストを参照のこと)。
2019年は6月に東京でWG会議を含めた総会が、12月にはカナダでWG会議が開催される。
Last update 2019.03.28
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