TC 276の活動状況について(2020年)

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TC 276 “Biotechnology” (ISOのページへ)
  2013年設立
  議長:Mr. Richard Gent(ドイツ)、Dr. Xun Xu(中国)、幹事国:ドイツ
  参加国:日本、米国、ドイツ、英国、フランス、韓国等 (P-member 33ヶ国)
       オブザーバー参加国(O-member) 16ヶ国
  発行IS:14、討議案件:21
  国内審議団体:(一社)再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)
 

討議内容:
 もともとは、分析技術や各種omics分析法に関する標準化のために設立されたTC。本来、再生医療製品を扱うTCではなかったが、経産省の意向を受けてFIRMが国内審議団体となり、再生医療分野の標準化を試みている。具体的には、TC 276内に4つのtask forceが立ち上がり、「用語」、「バイオバンクシステム」、「分析方法」、「生物学的製造プロセス」を担当することになった。そのうち、「生物学的製造プロセス」では、FIRMが中心となって再生医療等製品の製造に必要な周辺技術の標準化を試みることとなった。しかしながら、その作業はTC 276の業務範囲外と判断されうると同時に、ISO内で業務の重複は認められないという基本原則にも反することになる。とりわけ、上記TC 150/SC 7が日本提案で設立されたにも関わらず、別TCで再生医療分野の標準化を試みるグループがあるのは日本の戦略としては矛盾しており、国際的に再生医療分野の標準化をリードするためには障害となりうる。そのため、FIRMを含め上記TCの国内審議団体間で連携を取ること、国策として再生医療分野をリードしていくため省庁間の垣根を越えた連携も不可欠というコンセンサスを国内キーメンバー間で共有した。そのような中、SC 7のScopeに入っていなかったこともあり、TC 276は「Cell therapy」をScopeに入れ込むこととなった。これに伴い、細胞自体に関連した標準はTC 276が担当することとなる。
 TC 276でFIRMが標準化を検討している分野は「用語」、「製造プロセス」、「加工装置」、「培地等の消耗材」であったが、国内調整の結果、「用語」に関しては関連TCの共通言語としての規格作成をTC 150/SC 7で行うこととなり、TR 20386 “Inventory of biotechnology-related terms”として作成が続けられている。また、2017年、新たにデータ処理を対象としたWGが立ち上がっている。
 「加工装置」に関してはTC 198/WG 9との連携が必要であること、製造プロセスに関しては薬事法改正に伴う下部省令、通知等による再生医療等製品国内規制の具体像が見えてこないと難しいことがあり、実際にこれらの標準化を進めるためにはまだ時間と関連機関との調整が必要と考えられる。これを踏まえ、TC 276では「業界標準」としての標準化作成作業を先行させており、規制との調和はその成立後に検討する方針のようである。
 現在、WG は5つ存在しており精力的に活動を続けている。

2019年の活動状況:
 TC 276は年2回のペースで総会、あるいはそれに準ずる会議を開催してきたが、2020年度は他のTCと同様、Web形式の会議のみが開催された。まず、WG会議が5月から6月の間、総会が7月に開催された。前者では文書作成作業が行われ、後者では前者からの報告を受けて必要な決議を行うという形となった。その後は、適宜Web会議やISO Platformを使用して文書作成が進められた。
 各国の活動も活発であるが、米国はSCB(Standards Coordinating Body)を設立してからは、FDA(CBER)やNISTからの委員に加え、その担当者も参加を継続してさらに関与を強めている印象がある。また、中国もセルバンクシステムや関連する細胞の標準化までも進めようと力を入れている。工業標準とはいえ、今後の細胞治療製品等の製造に関係するため、その主導権争いが米中で繰り広げられている印象を受ける。我が国の委員会メンバーもその活動に大いに関与しているところであるが、米中の間に割って入るには更なる戦略が必要と考えられる。
 現在も、21件と非常に多くの案件が正式な標準化作業対象として登録されている。 以下に発行済み及び作業中文書のリストへのリンクを示す。

 2021年も対面会議を実施しないことが決議されており、2020年と同様のスケジュールでWeb形式の会議が実施される予定となっている。

Last update 2021.03.30
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