TC 210の活動状況について
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TC 210 “Quality management and corresponding general aspects for medical devices”(ISOのページへ)
1994年設立
議長:Dr. Eamonn V. Hoxey(英国)、幹事国(事務局):米国
参加国:日本、米国、ドイツ、英国、フランス、韓国等 (P-member 35ヶ国)
オブザーバー参加国(O-member) 15ヶ国
国内審議団体:(一社)日本医療機器産業連合会
討議内容:
医療機器の製造プロセスに係る品質マネジメントとそれに関連した一般的事項に関する標準化を行うTC。ISO 9001のセクター規格(医療機器に対応するよう改訂した子規格)であるISO
13485 「医療機器の品質マネジメントシステム-規制目的のための要求事項」やISO 14971「医療機器のリスクマネジメント」を作成したのがこのTCである。現在、作成作業中の文書は19あり、その中でもISO
13485の改訂作業は医療機器業界全体に影響を及ぼすものであり、その進捗が注目されている。実質的な改訂作業はTCではなくその作業を担当し続けているWG
1で行われており、順調に行けば2015年にはその改訂版の発行が予定されていたが、Draft International Standard (DIS)
stageでの投票でもう一つ上のstage(Final DIS (FDIS):発行直前のstage)とすることが否決されたため、その発行がどのようになるかは未知数となった(後述)。一方、2015年中にISO
9001改訂版が発行される可能性が高く、このまま成立すると親規格との整合性が取れずダブルスタンダード化する危険性を孕んでいる。
<解説>
- ISO 9001
製品の一定以上の品質(顧客が満足できる品質)を継続的に担保するためのマネジメントシステムを構築するにあたって要求される事項を詳細に定めた規格。一般的に、マネジメントシステムの対象となる組織は会社全体。最終製品そのものではなく、それを供給される顧客の満足度を高めるためのシステムが構築されていることを担保することで、結果的に最終製品自体も顧客を満足させることができるという考え方の元、この規格が作成されている。作成はTC 176 "Quality management and quality assuarance"が行っている。
- ISO 13485
医療機器の特性を考慮した場合、9001での要求事項だけでは不十分ということで、安全性、リスクマネジメントや滅菌に関する要求事項等を追加した医療機器製造のための品質マネジメントシステム規格。海外、特に欧州では強制規格となっているため医療機器製造販売業者はこの規格を満たさなければならない。日本では、現在、品目毎にこの規格に準拠したQMS省令の要求事項を製造所(製造業)が満たすことが求められている(完全な国際整合とはなっていない)。しかしながら、薬事法改正に伴い、QMSの対象は製造販売業者、製品群単位となり国際整合が進むようである(QMSとして満たすべき要求事項は現行のISO
13485とほぼ同一になる模様)。なお、これまで都道府県が行ってきた製造業のQMS適合査察は、第三者認証機関が行う予定である(クラス分類の高い機器に関しては、従来通りPMDAが行う)。
米国ではQSR(Quality system regulation) として規制文書が発行されているが、歴史的経緯からISO 13485はQSRの要件を数多く取り入れており、QSRとISO
13485とは同等とされている。
現在、改訂されているISO 13485は現行のものと比べてその内容が大幅に変更されている。ソフトウェアに関するものでは
- 医療機器の定義に「ソフトウェア」が明記されたことにより、機器内にインストールされているもののみならず、単独ソフトウェアも医療機器として扱われることになった。但し、Committee draft(CD)段階で「用語と定義」に記載されていた「医療機器ソフトウェア」の記述は 現段階(Draft of International Standard: DIS)では削除されている。
- 「製品実現」の項に、ソフトウェアのライフサイクルプロセス(改善・改良により最終的に使用不能になるまで製品寿命を延ばしていくプロセス)に関してはIEC 62304(IEC/TC 62のページを参照)を参照することと明記された(なお、IEC 62304 (Ed.1) をIEC SC 62AとのJWGで作成したのもこのTCである)。
等の変更が為されている。
しかしながら、昨年行われたDIS投票の結果、賛成23ヶ国、反対9ヶ国(全てP-member)となり、DIS stageまで進んだ原案を最終段階であるFDISとすることは否決された。
(注:DIS及びFDIS投票ではISOの参加国全てが投票可能となるため、DISをFDISへ進めるためには、投票P-memberから2/3以上の賛成票を得ると同時に、全体の投票数のうち反対票が1/4以下であることが必要となる。)
2014年にストックホルムで開催されたTC 210総会において、DIS 13485を2nd DISとして再投票にかけることが決議され、その作成のためのコメント処理を行うことになった(議長の強い意向が働いたものと思われる)。しかしながら、ストックホルム総会だけでは半分程度しか処理ができず、12月にNew
Orleansで追加作業が行われた(作業はTC ではなく、作成の主体であるWG 1により行われた)。その作業が完了したかどうかは、現時点では不明である。
<参考情報>
11月に医薬品医療機器等法が施行され、医療機器ソフトウェアと判断される単独ソフトウェアも医療機器としての規制対象となった。当然、製造工程においてQMSを満たすことが求められることになったが、従来の製造業ではなく製造販売業者がQMSの対象となるように法律が改訂されたため、ソフトウェア開発を外注した場合でもその設計管理を担当する外注元の製造販売業者がQMSを満たしていれば良いと判断されるようである。予想通り、製造販売業者に外注業者との密接なやり取りとその文書化が必要となると同時に、出来上がったソフトウェアのプロセス及びリスク管理のためのソフトウェア専門家が必要になるなどの変化が生じると思われる。また、国内規制において、基本要件基準にソフトウェアの安全性、品質、性能に対する要求事項が追加されたが、その規定の適用には3年の猶予期間が置かれた。それ以降、要求事項として具体的にどのソフトウェア関連規格との適合を要求するかについては現在も検討されている様子である(国内規制においても、図に示したように、何らかの形でセキュリティ規格やユーザビリティ規格が重要となる可能性が高いが、恐らく産・官での議論を経てガイドラインが作成されると思われる)。

Last update 2015.01.23
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