TC 150の活動状況について(2018年)
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TC 150 “Implants for surgery”(ISOのページへ)
1971年設立
議長:Mr. John Goode (米国FDA)、幹事国(事務局):ドイツ(ドイツ標準局)
参加国:日本、米国、ドイツ、英国、フランス、韓国等 (P-member 29ヶ国)
オブザーバー参加国(O-member) 17ヶ国
発行IS:156(うち13が直下のWGで発行)、討議案件:40(内5が直下のWGで討議中)
国内審議団体:
討議内容:
その名の通り、外科用インプラントに関連する国際標準を作成するTC。具体的には材料規格、人工心臓、人工関節等の品質・評価に関する国際標準を討議中。これまでに156の国際標準を作成している。現存するWGは7つ(2つ新設)、SCは6つである。詳細はリンク先のISOホームページを参照していただきたいが、以下にTC 150に現存するSC及びWGを示す。
WG:
- WG 7 “Fundamental standards”
- WG 8 “Breast implants”
- WG 10 “Use of retrieval of surgical implants”
- WG 12 “Implant coating”
- WG 13 “Absorbable metal implants”
- WG 14 “Models of tissues for mechanical testing of implants”
- WG 15 “Neurosurgical implants”(解散したSC 3の後継WG)
SC:
- SC 1 “Materials” 議長:Dr. Andy McCabe(英国)幹事国:ドイツ、発行IS:41、討議案件:15
- WG 3 “Ceramics”
- WG 4 “Metals”
- WG 5 “Plastics”
- SC 2 “Cardiovascular implants and extracorporeal systems” 議長:Dr, Jeffrey
S Borer(米国) 幹事国:発行IS:28、討議案件:17
- WG 1 “Cardiac valves”
- WG 3 “Vascular prostheses”
- WG 4 “Blood gas exchangers”
- WG 5 “Renal replacement, detoxification and apheresis”
- WG 6 “Vascular device/drug combination products”
- WG 7 “Cardiovascular absorbable implants”
- SC 4 “Bone and joint replacements” 議長:Dr Louise Jennings(英国)、幹事国(英国)、発行IS:28、討議案件:8
- WG 1 “Mechanical testing”
- WG 3 “Wear”
- WG 4 “General requirements”
- SC 5 “Osteosynthesis and spinal devices” 議長:Mr Ryan L. Siskey(米国)、幹事国:米国、発行IS:25、討議案件:4
- WG 1 “Osteosynthesis devices”
- WG 2 “Spinal devices”
- SC 6 “Active implants” 議長:Dr Roger Carrillo、幹事国:米国、発行IS:14、討議案件:9
- JWG 1 “Joint ISO/TC 150/SC 6 - IEC/SC 62D WG: Cardiac pacemakers and implantable defibrillators”
- JWG 2 “JWG between ISO/TC 150/SC 6 and IEC/SC62B: Effects of magnetic resonance imaging on active implantable medical devices”
- WG 3 “Cochlear implants”
- WG 4 “Implantable infusion pumps”
- WG 5 “Implantable neurostimulators”
- WG 6 “Circulatory support devices”
- SC 7 “Tissue-engineered medical devices” 発行IS:2、討議案件:2(詳細は別ページを参照のこと)
- WG 1 “Management of risk”
- WG 3 “Tissue-engineered medical products for skeletal tissues”
材料規格や人工関節の試験法等の標準化のいくつかが我が国主導で行われており、パーソナライズド人工関節や試験用模擬骨に関する標準化も日本主導で行われている。これらの提案には、現在、急速な発展を遂げている三次元積層造形技術、いわゆる3Dプリンターによる作製技術も絡んでおり、2015年のベルリン総会では三次元積層造形の標準化を行っているTC 261 “Additive manufacturing”とLiaison関係を構築している。なお、Liaison officerは日本のTC 150国内委員会委員が務めることとなり、情報収集が容易となった。
2018年の状況:
パーソナライズド人工関節や試験用模擬骨も含め、引き続き材料規格や人工関節の試験法等の標準化のいくつかが日本主導で行われている。これらの提案には、現在、急速な発展を遂げている三次元積層造形技術、いわゆる3Dプリンターによる作製技術も絡んでおり、現在、三次元積層造形の標準化を行っているTC 261 “Additive manufacturing”とLiaison関係を構築している。なお、Liaison officerは日本のTC 150国内委員会委員が務めることとなり、情報収集が容易となった。
2018年は米国、San Diegoで総会が行われた。この総会でも、昨年から目立ち始めた国際標準と各国規制における取り扱いの差異に起因する議論が見受けられた。標準は試験法など評価のための共通方法として規制とは区別して国際整合すべきものであるが、特に新興国を中心に、その標準を安全基準として規制に積極的に取り込むために具体的な規格値の記載を要求する傾向が未だに強かった。その擦り合わせを図るべく、昨年度は我々が主催で規制と標準の関係性(あり方)に関するワークショップを開催したところである。この懸念は別な形でISO本部でも話題になったと思われる出来事があった。この数年、頻繁にISOのルールブックであるDirectivesが改訂されてきたが、それと歩調を合わせる形で上層委員会より文書内に「各国規制が優先する」ことをいかなる形でも記載しないよう通達があった。この通達の趣旨は
- 標準はあくまでも通商障壁を取り除き、製品等の流通を潤滑にすることで、世界中で同等の技術等の恩恵を得るためのツールであること
- 各国規制に標準を活用するか否かは当局が決定することであり、標準が定めるものではないこと
を改めて周知することであった。
医療機器分野においては、ISOを始めとした各種標準が規制に利用されているが、その位置付けはあくまでも当局が決めることであり、標準の趣旨に鑑みても自明である。しかしながら、昨今、自国規制への利用を前提にした議論が進められる傾向があったことから、そこに「釘を刺した」ことになる。標準が規制の上に立つことは当然ありえないため、各国規制への考慮や優先等の留意点を標準に記載する必要はないという見解をISO本部が改めて示したことになる。
また、ISOが出席者の詳細を把握するよう求めたこともあり、San Diego総会では会議最初に行うRoll Callで自身のStakeholderとしての立場も紹介するよう、TC 150議長らが求めることになった。
San Diego総会から、日本が提案したインプラント評価用の患者モデルに関する標準を討議するための新しいWG 14が立ち上がった。出席者は日本メンバーが大半を占めたことから、このWG 14で対象となる患者モデルの必要性及び妥当性について、TC内部に広く周知する必要があると思われる。また、SC 1に日本からポリマー材料の新たな評価技術に関する標準提案の球出しが行われた。会議後、メールベースで正式提案前のコメント募集が行われ、2019年度早々にはその解決を行うためのWeb会議が開催される予定である。なお、SC 3の解散に伴い、当該SCにより発行された標準の定期見直しを主に担当するWG 15も新たに設立された。
ASTMとの規格重複については、議長らからなるタスクフォースである程度のルールが作成され、今回初めて運用された。各SC会議でその状況についての報告がなされたが、ASTMと非常に多くの重複があることが判明した。今後、その重複解決が機能するか、注視する必要がある。なお、2019年の総会は10月14日からスウェーデンのルンドで開催されることが決まっている。

Last update 2019.03.27
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