国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部

各室の紹介

埋植医療機器評価室

スタッフ

室長
中岡 竜介

[専門]高分子化学、医療機器及び医用材料(バイオマテリアル)の安全性・有効性評価(不具合等を含む)、組織工学製品に関する基礎的研究、人工知能技術を利用した医療機器に関する薬事関連研究、医療機器関連の国際標準化
[行政支援等]薬事・食品衛生審議会/再生医療等製品・生物由来技術部会委員、医薬品医療機器総合機構(PMDA)専門委員、PMDA科学委員会(第6期)委員、日本バイオマテリアル学会常任理事・理事・編集委員、早稲田大学医療レギュラトリーサイエンス研究所招聘研究員
[国際規格関連]ISO/TC 150/SC 7(再生医療機器)委員会マネージャー、ISO/TC 150(外科用インプラント)国内委員、ISO/TC 194(医療機器の生物学的評価)国内委員会事務局長、ISO/TC 210(医療機器の品質マネジメント及び関連する一般事項)客員、その他医療機器関連のISO, IEC/TC オブザーバー、医機連AI/SaMD-WG委員

主任研究官
植松 美幸

[専門]画像による組織/材料/構造/含有物の定量評価及び可視化(マイクロフォーカスX線CT、ハイパースペクトルカメラ、ケミルミイメージング等)、医療機器の清浄性評価、血液適合性評価のための医用材料シミュレーション(分子動力学的シミュレーション)、手術支援システム
[行政支援等]次世代医療機器評価指標作成事業事務局、日本コンピュータ外科学会理事、日本人工臓器学会評議員、日本生体医工学会代議員、早稲田大学非常勤講師、早稲田大学医療レギュラトリーサイエンス研究所招聘研究員

[個人ページ]https://researchmap.jp/miyuki_uematsu

業務内容

 医療機器はその使用部位、期間等に応じて多種多様なものが存在します。 中でも、高齢化社会を迎えた現在、人体の代替機能を果たす埋植医療機器の需要だけではなく、よりQOLの高い優れた機器のニーズも年々増加しています。一方、科学技術の発達に伴い、ペースメーカや植込み型除細動器等の埋植医療機器がより一般化したこともあり、埋植医療機器の不具合報告は増加傾向にあります。そこで、想定外の不具合の原因究明のための研究を担当する部署として当室が平成8年に設立されました。

 埋植医療機器は過酷な体内環境で使用されるため、劣化、破損等が当初の想定よりも短い期間で生じる等、想定外の不具合を生じ、その事前評価は未だに難しいのが現状です。その原因究明及び行政支援のため、当室では、生体と材料との界面上で起こる現象を明らかにするためのモデル表面を用いた基礎的研究や臨床における不具合報告等を元にした解析研究を行ってきています。さらに、最新の医用材料となり得る生体由来材料、特に脱細胞化処理を施した生体組織を対象とした基礎研究も実施しています。また、対象を埋植医療機器に限定せず、臨床使用時における不具合原因究明を目的として、他の部屋と共同でカラーコンタクトレンズ中に存在する色素がその物理学的特性(摩擦特性)に与える影響に関する研究も実施しています。

 加えて、近年、コンピュータ技術の爆発的進歩に伴い、分子動力学に基づくコンピュータシミュレーションを利用した医用材料・生体間相互作用に関するin silico解析や、ディープラーニングを始めとした機械学習アルゴリズムを利用した医療機器開発の活発化に伴う薬事的問題点を検討するための産官学連携研究、さらには以下に説明する医療機器のSDGsと関連する医療機器の清浄性評価に係る研究も行っています。

 医療機器のSDGsの設定と達成が必要とされる中で、使用済みの再使用可能医療機器(reusable medical device: RMD)を適切に再生処理し、再度患者に安全に使用することは重要です。治療の過程で血液や体液等により汚染したRMDを、患者安全を考慮して使用するためには、十分な洗浄・消毒・滅菌が求められます。しかしながら、従来は滅菌によって患者安全を保証すれば十分と考え、洗浄の重要性が認識されてきませんでした。

 「医療現場における滅菌保証のガイドライン2021」及び「医療現場における滅菌保証のための施設評価ツールVer.1.1」を参考にSOP及びデータ解析方法を設定し、産学との連携体制の下、様々な医療施設における洗浄後のデバイスを対象にした清浄性の実態評価を進めています。

 部全体で得られた成果を各種ガイドラインや国際標準化に繋げることを目的とした調査研究、国際標準化の重要性を啓発する目的も兼ねた情報提供用ホームページの作成、さらにはその目的を達成するための講演等も当室が主として担当しています。

 また、他の室同様、当室も次世代医療機器・再生医療等製品評価指標作成事業における事務局を担当して評価指標案の作成に寄与している他、革新的医療機器等の実用化促進に資するガイドライン案の作成にも携わっています。

 現在の主な業務は以下のとおりです。

    1. モデル医用材料表面に対する生体反応解析と生物学的安全性及び適合性評価手法の開発に係る基礎的研究
    2. コンピュータシミュレーションを利用した材料・生体相互作用解析に係る基礎的研究
    3. 人工知能技術等の革新的技術を利用した医療機器における薬事的課題抽出とその解決策検討に係る研究
    4. カラーコンタクトレンズの摩擦特性に関する基礎的研究
    5. 医療機器の清浄性評価に係る研究
    6. 医療機器の安全性・有効性に関する国際・国内動向調査、国内外における標準化活動(JIS、ISO、IEC)及びその啓発活動(国際標準化に関する試験的窓口)
    7. その他、研究と関連した行政支援業務