TC 194の活動状況について(2019年)
(2018、2017、2016、2015、2014の活動状況はそれぞれの年をクリックしてください。)
TC 194 “Biological evaluation of medical devices” (ISOのページへ)
1998年設立
議長:Mr. Geremy Tinkler(英国:2018年より)、幹事国:ドイツ
参加国:日本、米国、ドイツ、英国、フランス、韓国等 (P-member 32ヶ国)
オブザーバー参加国(O-member) 19ヶ国)
国内審議団体:(一社)日本医療機器テクノロジー協会
発行IS:32、討議中文書:12
討議内容:
医用材料及び医療機器の安全性に関する生物学的評価方法(細胞毒性、変異原性、全身毒性等)に関する標準化を討議するTC。このTCで作成されている規格は、その番号から10993シリーズとして業界には知られており、WG
1で作成された基本的考え方に関する規格は国内通知にも引用されている。現存するWGは17、SCは1であり、そのSCで再生医療に使用する細胞のリスクマネジメントに関する規格が発行された。これまでに30の国際規格を作成している。
歴史的には、TC 150から安全性評価技術に関する部門が分離して設立された様子であるが、その当時の経緯についての詳細を知っているメンバーは少なくなっている。
以下に現存するSC及びWGを示す。
- WG 1 “Systematic approach to biological evaluation and terminology”
- WG 2 “Degradation aspects related to biological testing”
- WG 3 “Animal protection aspects” (convenorは日本人)
- WG 4 “Clinical investigations of medical devices in humans”
- WG 5 “Cytotoxicity”
- WG 6 “Mutagenicity, carcinogenicity and reproductive toxicity”
- WG 7 “Systemic toxicity”
- WG 8 “Irritation, sensitization”
- WG 9 “Effects on blood”
- WG 10 “Implantation”
- WG 11 “Allowable limits for leachable substances”
- WG 12 “Sample preparation and reference materials”
- WG 13 “Toxicokinetics”
- WG 14 “Material characterization”
- WG 15 “Strategic approach to biological assessment”
- WG 16 “Pyrogenicity”
- WG 17 “Nanomaterials”
- SC 1 “Tissue product safety” (別ページ参照)
各WGで作成、あるいは改訂中の文書をリストで示す。
2019年の状況
2019年は、一部WGのinterim meetingが10月に米国、メリーランド州のアーリントンで開催された。特筆すべき動きは以下の通りである。
- WG 3:
日本がコンビーナを務めているWGであり、「実験動物福祉」に関する標準(Part 2)を作成している。昨今の動物愛護運動の高まりもあり、ILAR指針や国内における環境省のガイダンスとの整合性を考慮した改定版の作成が進んでいる。現在、DIS投票の開始を待っている状況である。
- WG 8:
三次元ヒト皮膚モデルを用いたin vitro刺激性試験のround robin testの結果を入れ込んだ刺激性試験に関する文書案が、Part
23として作成されており、DIS投票も終了した。その際に寄せられたコメントの処理がアーリントン会議、その後のWeb会議にて行われた。エキスパート間ではコンセンサスが得られたことから、近日中にFDIS投票が実施されることとなっている。なお、一次マーカーである細胞生存率に加え、二次マーカーとしてサイトカインを採用するよう、文書を修正するための日本提案は概ね受け入れられている。また、Part
10を「感作性試験」専用の標準にするための作業も進んでいる。
- WG 11:
毒性学的閾値(Threshold of Toxicological Concern: TTC)の概念を生物学的評価に取り入れるため、Part
17 “Establishment of allowable limits for leachable substances”の改定を始めることが確認された後、なかなか議論が進まなかったが、アーリントン会議前にWorking
Draftの回覧とコメント募集が実施された。その結果、500を超えるコメントが寄せられ、アーリントン会議では技術的コメントに絞り込んでその処理のための討議が実施された。なお、CD
stageに進むことについてはWG内でコンセンサスが得られた様子である。本文書は化学分析を生物学的安全性評価に入れ込むために必須の文書であるため、修正された文書内容やその方向性に関して注意が必要である。
- WG 12:
WG 15で結成されたtask forceがそのままWG 12に移行して実施されたround robin testは、その目的や手法が不適切であったため、その結果を文書に入れ込むことは叶わなかった。日本提案に基づき追記された有機溶媒抽出については、理解不足を背景にした疑義はある程度解決したことから、改定案においてもその内容は維持されてDIS投票で寄せられたコメント処理がアーリントンで行われた。特に大きな動きはなく、FDIS投票に進むようである。
- WG 15:
もともと、特定の文書作りは行わず、今後対応すべき案件の抽出と関連する最新情報の共有を目的としたWGであり、他とは一線を画している。WG 14において化学分析の生物学的安全性評価への適用に関する標準が完成したが、その実際の適用において担当するCROの質や分析手法等に起因した問題点が提起されたことから、化学分析適用に関するガイダンスを作成するためのタスクフォースが立ち上がった。その原案が一部メンバーに回覧されたが、失敗したround
robin testを不適切な形で引用する等、様々な問題点を有しており、まずはその目的の明確化と妥当性についてを討議するよう、タスクフォースのリーダーに日本から依頼している。
次回総会は2020年4月に中国、青島で開催されることとなっていたが、新型コロナウィルス感染症の蔓延により11月以降に延期し、7月にドイツでinterim
meetingを開催することとなった。しかしながら、欧州にまで感染症問題が飛び火したことから、その開催も危ぶまれている。

Last update 2020.03.18
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